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学校生活

先生の本棚

本を通して伝えたい、
先生から10代の皆さんへの
メッセージ

先生たちは、今までどんな本に出会ってきたのでしょうか?
先生と本にまつわるエピソードや本を通じた体験談、
おすすめの本について、図書館スタッフがインタビュー。
先生の本棚をのぞいてみませんか?

第1回

大木 崇先生
(社会科)
活字を読んで思考することから見える風景を、
皆さんにも見てもらいたい。
森村生だった頃の図書館の思い出を教えて下さい。
私の中高生時代、森村の図書館は独立した建物でした。入学時の図書館ガイダンスを聞いて、少しやる気になったのですが、正直あまり利用しませんでした。というのも、小学生の頃、親に読書を強いられた全文表示することがあって、実はあまり読書好きではなかったのです。イヤイヤながらの読書は長続きしませんね。それが必要に迫られて読むようになり、読書の重要性にも気付きました。今では、中高生にもっと本を読んで貰いたいなと思っています。
どうして本を読む必要があると考えているのですか。
抽象的な考え方が出来るようになるためには、映像のような感覚に訴えるものだけでは限界があるからです。活字を読んで思考しないと到達できないレベルがあるし、そのレベルから見える風景を生徒の皆さん全文表示するにも見てもらいたい。自分自身、新しい考え方に触れたいし、昨日まで出来なかった考え方が出来るようなりたい。生徒の皆にもそれを望みたいのです。歴史を勉強すれば、頭の中に人名や年号は増えて行きますが、そのこと自体はそんなに重要なことではありません。それだけでは勉強した人自身が変わるわけではないからです。学ぶということは、その人が変わる、その人の世界観が変わるということです。
世界観が変わるような本を紹介して下さい。
『夏に読む本』で紹介した大澤昌幸の本などは頭の体操になりますね。この見方をすると世界はこういう風に変わってくるのかと。世界史の授業に関心を持って貰える本なら、杉山正明『遊牧民から見た世界史』全文表示するがおすすめです。私たち日本人は、司馬遷が描いた漢民族中心の正史を教科書で学びますが、それとはまったく違った風景が見えて来ます。当時世界の主役は匈奴の方だったかもしれない。発想そのものが変わっていくんです。それが現代の世界を見直すきっかけになるかもしれません。
最後にひと言お願いします。
推薦図書なんていうと、中学生などは引いちゃうかもしれません。中高時代、当時は本の後ろに図書カードというものがはさまっていて、借りる時には名前を記入して提出することになっていました。すごい全文表示する人がいて、手に取る本ごとにその人の名前が記されているのです。そんな人になってみたい! 強制ではなく、そういう仲間の影響が読書に駆り立てるというのが良いですね。今ならアイドルがオススメとか。ただ、私自身無理矢理読まされたことが、自分の読む力になっているのも事実なのです。
インタビューの中に登場した先生オススメ本
  • 『〈世界史〉の哲学』
    大澤真幸 著(講談社)
  • 『遊牧民から見た世界史』 
    杉山正明 著(日本経済新聞出版)

第2回

伊藤 なつみ先生
(国語科)
読書に文系と理系のくくりはないのだなと思います。
『夏に読む本』(図書館発行)で
芥川賞作品『コンビニ人間』を勧めていらっしゃいましたね。
芥川賞といえば、ピースの又吉さんの『火花』が「芸人が芥川賞を取った」ということでずいぶんと話題になりましたが、芥川賞の対象は純文学なので、表現が抽象的だったり比喩表現が多かったりして読みに全文表示するくいものが多いのです。でも、この作品は現代を何となく生きにくいと思っている人、自分ってどこか普通じゃないと思っている人、それを周りにはちょっと言えないなと悩んでいる人、またそんな人に寄り添いたいなと思っている人にもわかりやすくて、これなら推薦できると思い、取り上げました。
本の紹介はよくなさるのですか。
クラスに学級文庫があるので、何か生徒に勧める本はないかなと思って本屋によく行きます。朝読の時、何を読んでよいのか分からない人に「これ読んでみて」と渡せるようにと作りました。また授業の中で全文表示する「この本、うちの学級文庫の中にあるから借りてっていいよ」と他クラスの人にも言うこともあります。
本をよくお読みになるのですね。
昔からよく読んでいた訳ではありません。中高時代は部活一本で忙しかったし。中高生ってとても忙しいから、意識的に読もうと思わないと、なかなか読書は出来ないと思います。私も通勤電車の中が読書タイムです。
朝読で生徒達はどんな本を読んでいますか。
以前は小説の人が多かったけれど、今はジャンルが様々です。スポーツ、趣味、専門書等の難しい本を読む生徒もいます。みんな結構読んでいますね、読めと言われるからでしょうが。本を読む習慣をつけて全文表示するあげれば、読むと思うんです。私もいろいろなジャンルに挑戦したいと思っていて、脳科学や生物学、国家や経済を扱ったものなど、難しくない程度のものですが、楽しんでいます。先日は、AIと将棋の棋士の話を読んでいたら、国語の授業に通じるものがあるなと感じました。文系とか理系とかのくくりなんてないのだなと思っています。生徒にとってみれば、毎日生きている世界しか経験していないので、その背景・歴史・文化的なものを説明しないと文章が読めません。ですからそれを説明するには普段からいろいろなものを読んでおかなくてはと思っています。
今生徒にお勧めの本はありますか。
『スマホ脳』かな。人間と猿の違いは相手の痛みや喜びを共感できるかどうかで決まり、その共感する脳は対面でしか育たないそうです。対面・観劇・映画で比較実験したところ、この順で脳の活性化は鈍り、全文表示する特に映画はダメなんだそうです。この話を授業でしたら、理系の生徒が、それなら現実と区別できないVRを使ったらどうなんだろうと発言してくれました。面白いですね。
なお、図書館には司書の石松さんがいらっしゃるので、本を探すときはぜひ相談するといいですよ。
最後に、中高時代に読んだもので、もっとも印象深い本を教えて下さい。
夏目漱石の『こころ』です。中学で初めて読んだとき、高校の授業で読んだとき、大人になったとき、年齢と共に感想が変わってくる。それが実に面白いのです。それが国語の教師になった一つの理由でもあります。泣けますよ!
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インタビューの中に登場した先生オススメ本
  • 『コンビニ人間』
    村田沙耶香 著(文藝春秋)
  • 『スマホ脳』
    アンデシュ・ハンセン 著、
     久山 葉子 訳(新潮社)
  • 『こころ』
    夏目漱石 著

第3回

真木 愛先生
(地歴公民科)
本を通して、
若者文化を吸収できるのが楽しい。
公民の授業で憲法を取り上げていらっしゃるそうですね。
憲法は、今国会で取り上げられている改憲の話ですと、イデオロギー的で扱いが難しいのですが、私がお話したいのは、憲法の中身を通して社会を見ていくと、すごく面白いということです。大学院で議論してい全文表示するたようなことを、14~15歳の生徒達に身近に感じ取って貰えるかが勝負だと思っています。
というと…
今ふつうに勉強することができるのも、首相を批判できるのも、日本国憲法があって、私たちが守られているからです。憲法は、国家と国民との間に交わされた約束です。例えば、テレビドラマのように刑事が全文表示する怪しい人物に「署まで来い」などはあり得ません。(現行犯は別ですが)逮捕状がなければ連行できません。また、今和歌山で起こった富豪の殺人事件でも、報道ではあの女性が犯人であるかのように扱われていますが、本当はそういう報道には問題があります。無罪推定の原則があるのです。憲法31 条には、「法定手続きの保障」つまり法律に定める手続きによらなければ処罰されないと記されています。学生は学校に通っている間は学校に守られていますが、一個人として社会に出ると、一労働者として弱い立場になります。そのようなとき、憲法学習を積み重ねた人ならば、人権感覚が身につき、世の中の理不尽な事柄に対しては冷静に見ていくことができるでしょう。
憲法は法律とは違うそうですね。
英語で憲法はconstitution、構造とか枠組みという意味です。日本語にすると憲法となり、まるで法律のようですが、法律はlaw( a rule, usually made by a government[ CambridgeDictionary]) つまりルール。全文表示する一方、憲法とは国家の枠組み・理念が記されたものです。
なるほど。枠組み・理念だから英国のような不文憲法も可能なわけですね。
憲法を英語で読んでみると面白いですよ。憲法の前文に「この権威は国民に由来し、この権力は… … 」という部分がありますよね。英文では”of the people, by the people, for the people” となっていて……
それって、リンカーンじゃないですか。
ゲティスバーグの演説ですね。民主主義の理想が込められていると言えます。24条の「家族の中の平等」条項も面白い。本来家族の問題は国家と国民との間の問題ではなく、民法で扱うべきもの。ところがこれを全文表示する入れないと、当時の日本では封建的な男性権力者が実現させないだろうという議論があり、取り入れた経緯があります。
日本国憲法の原案作成にはGHQが深く関わっていますが、当時世界でもっとも理想的な枠組みにしようという意図があったと思われます。ですから押しつけられたものという意見もあるわけです。様々な意見がありますから、学校は政治的中立を守るために、いろいろな意見を紹介します。憲法に関する面白い本、読みやすい本はあとでリストを見て下さいね。
本日お持ち下さった本は学級文庫のものですか。
辻村深月さんの『かがみの孤城』。最初生徒が貸してくれたのです。我が家にも中3 の娘がいるのですが、自分の娘と同じ世代と対等に―― 対等にというと失礼なのですが――話せるとは思いませんでした。全文表示するそれが嬉しくて、若者文化を吸収できるのが楽しいです。辻村さんが「中学生時代に読ませたい自分の本なにかといえば、これ」という本で、早速買って学級文庫に入れました。ほかにも『家族シアター』や『ツナグ』がいいですよ。辻村さんは描写が上手で、家族の心情が細やかに描かれていて、「なるほど。娘から母親はこう見えるのか」などと感心しながら読んでいます。
その他にお勧めは、三浦しをんさんの『神去なあなあ日常』や『風が強く吹いている』、香山リカさんの『10代のうちに考えておくこと』、菅野仁さんの『ともだち幻想』、小川洋子さんの『博士の愛した数式』、恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』など、10代の皆さんにぜひ読んで欲しいです。
本当に読書好きなのですね。
小さい頃から好きでした。父親が本屋に連れて行ってくれ、マンガ以外なら何でも買って良いよといってくれてことに、今でも感謝しています。図書館も好きでした。中3から高1くらいは太宰治にはまってました。全文表示する『人間失格』や『斜陽』が好きで、住んでいたところが小平だったので入水自殺した玉川上水に近く、どんな人だったのだろうと思いながら読んでいました。今はもう読みませんけれど。
だからこそ10代のうちに読んでおきたいですね。どうもありがとうございました。
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インタビューの中に登場した先生オススメ本
  • 『憲法主義条文には書かれていない本質』 
    内山奈月(AKB48)・
     南野森 著(PHP研究所)
  • 『高校生のための憲法入門』
    斎藤一久 著(三省堂)

第4回

海鋒 秀哉先生
(理科)
人生は宝探し。
絶対に、掘ることを止めてはいけない。
どうして物理の道に進まれたのですか。
中学生の時は歴史が好きで、城や遺跡を探索する仕事に興味がありましたが、忘れもしない高2の物理の時間、窓際でボーッと空を眺めている生徒を注意した先生は、全員の教科書を閉じさせ、突然、なぜ空は全文表示する青いのかを熱く語り始めたのです。その説明にクラス全員頷きながら耳を傾け、深く納得したのです。私自身は、今まで空の青さに疑問すら抱かなかったことにとてもショックを受け、恥ずかしさが込み上げてきました。こういうことをもっと早い時期に知っていれば、自分の将来の選択ももっと広がったんじゃないか、もっと若い人にこういうことを伝えていきたいなと、理科の教員になるために大学へ行きたいと思うようになりました。
高2の時点で物理の先生になろうと思われたのですね。
物理というより理科、自然界を説明できるのは理科なんですね。そして、もう一つの切っ掛けが、この世には、重さもない、大きさもない、でも何かあるというニュートリノの話を聞く機会があり、「何も全文表示するないけど、何かある」ってどういうことなんだ、それこそ宇宙物理分野の話であることを知って、物理を選びました。
若い人達に自然界の面白さを伝えたいという思いは実現していますか。
最近は高校を担当することが多いのですが、中1の授業はとても楽しみです。たとえば、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を合わせると中和することは小学6年生で習いますね。でも、私たちの普段の生活、例え全文表示するば台所にその様なものはありません。なんで塩酸と水酸化ナトリウムなのかといえば、実は身近なもので実験すると、誤差が大きく、煩雑で、良い結果がうまく出ないからなのです。ですからシンプルな塩酸と水酸化ナトリウムで学んで、それで終わるのではなく、身の回りのどんな場面で中和が使われているかということを学んで貰うというようなことを、30年近く一番大切にしてきました。中1生にはそういう話がたくさんできます。
数学の苦手な文系人間には理科がわからないのではありませんか。
いやいや、そうではありません。一番大切なのは疑問を持つことです。なぜなんだろうと思うことが絶対に必要なのです。中1に光の単元があって、一人で担当すると、なぜ空が青いのかで1時間、夕焼けが赤い全文表示することで1時間、虹に1時間、海の青さに1時間という風に、中高一貫を活かして重点的に話をすることができます。
実際は中学生には空の青さを完全に説明することはできないのですが、高校に入って、少し数式なども使うと、直感とかイメージが確信に変わります。
やはり…数学ですね。
ハハハ、少し出てきます。でも小学生や中学生にとって一番大切なのは、なぜなのだろうと疑問を持つことなんです。その疑問を少しでも自分なりに解決していこうという気持ちになって欲しいのが高校生です。高3生にはよく言うんですが、疑問を持つことも大切だが、疑問を放置しないことがもっと大切なのだ、それが理系なのだと教えています。
理系ではない人はどこまで物理を理解しておけば良いですか。
人間が作ったものを学ぶのが社会科だとすれば、自然が生み出したものを学ぶのが理科です。ニュートンが言っているように、私自身が知っている物理の知識など、グラウンドに落ちている米粒みたいなもの。全文表示する知らないことだらけだし、すべてを知ることなど絶対無理。だからこれを知っておかなければならないというよりも、疑問を持つことが大切です。疑問を持つためには最低限の知識が必要かもしれませんが、最低限の知識+「なぜなんだろう」があればいいのです。いろいろなことに興味をもつこと、知識欲を持つことは、結論を知ることより大事なことです。文系・理系に限りません。理系だって、どうしてこういう法律があるのだろうと疑問を持つことから始まるのだと思います。
高1生くらいによく言うのですが、人生は宝探しだという話をしていて、自分は理系だから、文系だから関係ないではなくて、一回で宝なんて見つからないし、見つかったって面白くない。まだ掘ったことのない場所を繰り返し掘ってみて、見つかったときの達成感は想像以上のものになるから、絶対に掘ることを止めてはいけない。だから今は、たくさんの無駄を経験しなさいと言っています。今の段階で取捨選択するのではなく、知識欲をもってやれることをやることが大切なのです。
先生の話を伺っていると、実にポジティブな気持ちになりますね。一方で、福島第1原発の事故や地球の温暖化など、若い人達の科学技術への疑念が影を落としているように思いますが。
そうでしょうか。3・11の大震災の後、大学の土木系・建築系の倍率が一気に上がりました。また地震予知を含め、理学部人気が高まりました。それは自然をコントロールするというのではなく、うまく付き合って全文表示するいけないかということですね。こうなってしまった日本を、自分が建て直すんだとか、津波の被害を最小限に抑えようという高校生がたくさん出てきたんですね。つい最近も、熱海で大規模な土石流が発生し、甚大な被害が生じました。こういうことの後で、学生達が奮起して日本のために自分が何かしたいという動きがあるのでしょう。2011年の時は、こういう高校生がいっぱい出てきたんだと、倍率表を見て涙が込み上げてきました。
先生が出会った本をご紹介下さい。
高3の春、ニュートリノを知ったときに、チェレンコフ光という言葉の響きに強く心引かれました。宇宙から飛んできたニュートリノが水中で発する青白い光です。それを捉えようと、岐阜県神岡にある廃鉱、全文表示する地下1000メートルの跡地に水槽を造って水をため、そこを通過した足跡をチェレンコフ光として捉えようという話です。その話を聞いて釘付けになりました。私はすぐに横浜の有隣堂へ行って、ニュートリノの本を買いました。その日だったか、次の日の午前中だったか、あっという間に読み終えたのを覚えています。その本を書いた人が、後にノーベル賞を受賞した小柴さんです。「何もないけれど何かある」について、もっと知りたいと思うようになりました。その後、ニュートリノには重さがあることがわかりましたが。
私も以前、カミオカンデで光を捉えていた光電管の実物を見たことがあります。
あれを作ったのは浜松ホトニクスという会社なんです。小柴さんから依頼を受けて、赤字覚悟で開発し提供したとのことですが、20年ほど前に授業でその話をしたら、ある生徒が「その会社の創業者はわたしの全文表示するお爺ちゃんです」と言ってきたんですよ。
やっぱり森村って凄いですよね。この学校の人達は、いろいろなところで繋がりがあるんですね。
カミオカンデ・ニュートリノということばと出会って、先生のように人生が変わっていく人もいれば、私のように知ってはいるものの意味をつかみ損ねている者もいる。面白いですね。
どこに出会いがあるかわかりません。だからこそ自分からいろいろと興味を抱くことが大切なのです。話は元に戻りますね。
他には…
ここにある『地球のかたちを哲学する』は絵本ですが、見ているだけで楽しくなります。昔の人は地球をどんな形と考えていたんだろう。写真や絵を見ているだけで、いろいろな疑問が湧いてきます。知識欲を全文表示するかき立てる本がこの図書館にはたくさんあります。
いっぱい字が載っている本だけじゃないことを知って欲しいのです。その上で興味を持ったものについて調べてみると良いでしょう。
森村では「言語技術」ということばの教育を大切にしていますが、理系の疑問はイメージで始まることが多いのです。ビジュアライズ思考ですね。最初に言葉ありきではなく、このような本を見て何だろうと思うことが大切ですね。雲の形ばかりを集めた本も有名です。
観察するうちに、何でここにこんな模様があるのだろうとか思いますが、必ずしもそれを一つ一つ言語化しているわけではありません。クリエイティブな発想は、ビジュアライズ思考から生まれると東大の先生も言ってますね。見て想像することの重要性です。子ども達にはもっと見てほしいですね。
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インタビューの中に登場した先生オススメ本
  • 『地球のかたちを哲学する』
    ギヨーム・デュプラ 文・絵、
     博多かおる 訳(西村書店)
  • 『空の名前』 
    高橋健司 写真・文(光琳社)
  • 『空の色と光の図鑑』
    斎藤文一 文、
     武田康夫 写真(草思社)

第5回

江口 徹先生
(保健体育科)
学ぶことは、
大前提として楽しい。
中高図書館では、一昨年の夏から「夏に読む本」(先生方からのおすすめの本) をまとめています。そのなかで、江口先生から4冊の本を推薦していただいております。 読み物・経済・総合と、4冊とも全く違ったテーマです。本を選ぶとき、同じようなテーマになりがちですが、先生はどういった視点で本選びをするのですか?
ジャンルがかぶらないように、という事は意識しています。本屋さんに頻繁に行き、店内を一周してから、平積みになっている本を手に取ります。そうすることで、いま流行っている本や話題になっている本の全文表示する傾向を知ることができるからです。今なら、ウクライナや政治関連の本が目につきます。その後、自分がどのジャンルの本の前に立ち止まったか・・・、自分の関心のある(ピンときた)本を選び出します。気になった本を1~2冊買って読みますが、意識して同じジャンルにならないようにしています。年間で考えると、結構な冊数の本を購入するので、我が家には本が沢山あります。
関心のある本に偏りがないのですね。
いったん気になったら、本を開いて目次を読んで、内容が大まかにわかるまで時間がかかっても読んでみます。
いつから本が好きになったのですか?
きっかけとしては・・・、ひとつは、自由課題が出される小学校の夏休みに、いつも絵を描いていたのですが、ある年、読書感想文を書きました。自宅にあった「世界の昔話」のひとつひとつの話しを、毎日全文表示する一話ずつ、夏休み中3 0日間毎日読んで感想を書きました。そこで読んだことを自分なりに考えるのがおもしろいと感じました。 二つ目は、小学生のときに本屋の店内を見て回っていて、スポーツ科学の本を見つけました。スポーツが好きで、少し周りよりもできたので、なぜ自分は人よりも運動ができるのだろう? という疑問がありました。小学生がスポーツ科学の本を読んでいるのは、周囲には驚かれましたが、自分にとっては「あれ? みんなは違うの?」という感じでした。このあたりから、自分は本を読むことが好きだという自覚を持ちました。本を読みながらメモをとるということが好きで、読んだ後には読書感想文を書いてアウトプットする、という事をしていました。
今日は、おすすめの本をお持ち頂いています。
『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭 著(文春文庫)
この本は、作者が、社会人になったときに世の中のことを何も知らないことを自覚し、家庭教師として東大生にお金を払って、質問形式で学んで行くというところから始まります。世のなかのことについて、全文表示する自分の感じた疑問を、相手が年下の人であっても関係なしに質問するという姿勢が好きです。やがて、社会主義のキューバへ興味をもち、資本主義と対極にある社会主義を知るためにキューバに旅することになります。自分の興味を追求することこそが、探究学習だと考えていて、この行動を起こしてみるということは教員も忘れてはいけないことだと思います。是非読んで欲しくて持ってきました。 人間は、ボタンがあったら押してみたいし、海があったら向こうに何があるか、見てみたいものです。でも、周りの目を気にしたり、周りの価値観に適用しようとしているうちに、徐々にその気持ちが薄れていく、それでも、やってみないと、前には進めないものです。小中学生で、いろんな物差しで測られるうちに、こわくなったりして行動を起こすことで何かを確かめる気持ちが薄れていってしまいます。でもやはり、行動を起こし続ける、まず動いてみるのが大事だと思います。
江口先生は、サッカーがご専門で、授業や部活動でサッカーの指導をされています。コロナ禍での体育は、ご苦労がおありかと思います。制限されたなかで、いつもと違ったメッセージはありますか?
コロナ禍で制限があっても、以前と変わりなく、運動を楽しむことが大事ですね。卒業後も、自分の健康のためや趣味で、あるいは楽しいから運動することを続けられるように、というのがメッセージで全文表示するす。運動しなくてもスポーツ観戦でもいい。例えば、実際に自分がバドミントンをしなくても、「観る」のであっても、運動との関わり方が広がり、生涯スポーツといえるかもしれません。
先生が授業で指導されていることを、学校図書館を通して本の利用につなげてゆくとしたら、どのようなことができるでしょう?
授業で学んだことを深めることが大事で、そのためには学校図書館の活用は良いと思います。たとえば、「食事」という単元で考えてみると・・・、授業で血糖値についてなど学ぶとします。ただし、自分の全文表示する食生活の中で実際に食べるものを決めていくためには教科書に載っていることだけでなく、自分でネットや本で調べることが必要となります。スポーツの倫理や価値観など複雑な問題については、教科書プラスアルファで本で読むことが必要になります。自分で探究しなければできないものは、図書館で調べることをすすめています。
先生のクラスでは、朝の読書時間はどのような様子ですか?
いろいろなジャンルの本、例えば経済や事実に基づく話や小説などを学級文庫には置くようにしています。
具体的にどんな本がおすすめですか?
例えば、星新一の『ボッコちゃん』のようなショートショートは、すぐに読めるし、ひとつひとつにオチが付いていて面白いです。中学生に本の読み方を教えるときに勧めます。『サードドア』は、学習して全文表示する成し遂げる、試行して修正を繰り返すということを学べる内容。それが本当の学びだということを教えてくれます。
最後に、中高生へのメッセージをお願いします。
日々の生活を、自分のものにしてほしい。部活動や習い事などを、どれだけ主体的に自分のものにできるかどうか。進路に関しても同じ。例えば、部活動をなぜやっているのか、自分に問いかけてほしい。高全文表示する校を卒業するときにどうありたいのか、理想にどのくらい近づけたか。目的を常に問いかけ、日頃から意識していてほしい。自分は、保健体育の教員であり、その前に教員であり、子どもに接する大人として、学ぶことが楽しいという事を伝えたいです。今やっていることがつまらないとすれば、何か原因があるはず、学ぶことは、大前提として楽しいはず、もっと自分の心の声を奥深く突き詰めれば、学習は楽しいはず、追求してゆけば、自分もやってみたいと思うはず、いまはその過程にいるんだよ、と…。
保健体育の先生である江口先生は、自らの専門のサッカーを部活動や授業で指導なさっています。その姿と、本を読みながらメモをとってアウトプットすることが好きというのは、正反対のようにも感じますが、根底には、学ぶことを楽しむということが、江口先生の基本だと感じます。今日は、どうもありがとうございました。
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インタビューの中に登場した先生オススメ本
  • 『ボッコちゃん』
    星新一 著(新潮文庫)
  • 『金持ち父さん貧乏父さん』
    ロバート・キヨサキ 著、
     白根 美保子 訳(筑摩文庫)
  • 『ミライの授業』
    瀧本哲史 著(講談社)
  • 『サードドア: 精神的資産のふやし方』
    アレックス・バナヤン 著、
     太田黒 泰之 訳(東洋経済新報社)
  • 『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
    若林正恭 著(文春文庫)

第6回

大村 咲希先生
(国語科)
ふつうに言ったら恥ずかしいことも、
短歌にすれば文学になる。
早速ですが、先生イチオシの本が出たそうですね。
4月に刊行された『ふりょの星』という川柳の句集です。私は大学時代短歌のサークルに入っていたのですが、そのサークルの後輩である暮田真名さんという方の本です。彼女も初めは短歌を作っていたの全文表示するですが、途中から川柳を中心に作るようになりました。友人の作品が本になるのは感慨深いですね。はじめから、暮田さんのセンスには驚き続けていました。中高生にも読んで驚いてほしいと思います。
暮田さんの川柳は、破調ですよね?
七・七の句が多いのですが、これは五・七・五ではないけれど川柳では一般的な形だそうです。ほかの破調もありますね。川柳の中でも芸術性の高い「詩性川柳」と呼ばれているジャンルです。サラリー全文表示するマン川柳やシルバー川柳とはまったく異なり、文芸として尖っていった川柳は、普段わたしたちには読む機会がなかなかないですが、面白いです。
暮田さんが最初に川柳を知ったきっかけのイベントを主催した小池正博さんの川柳は、< はじめにピザのサイズがあった>とか、暮田さんからよく名前を聞く川柳作家の石田柊馬さんの作品は、<ヘルシンキオリンピックの角砂糖><妖精は酢豚に似ている絶対似ている>とか。こういうなぞの五・七・五とか七・七とかそうじゃないもの……があると知って、びっくりしました。
『ふりょの星』は、一般の書店でも売っていますし、ヴィレッジヴァンガードには特典のシール付で置いています。また、帯は暮田さんの好きなD r .ハインリッヒさん(芸人)に書いてもらっていて、表紙は吉田戦車さんという夢のような豪華メンバーです!
本の装丁を若い人が見たときに、興味をひかれると思いますが、ではタイトルの「ふりょの星」の「ふりょ」が何か? ということは、作品の中で説明があるのですか?
それが……、説明はないのです!どういう意味なのでしょうね。
作品もそういうものが多いです。何だろうと思っても、突き放されるような……。
それは、造語なのですか?
暮田さんの川柳には造語はあまりなくて、ふつうは使われない使い方で言葉の使い方をずらしてある、という形なのでこれもそうかなと思います。
思いがけないという意味の不慮でしょうか…。
ですかねえ。短歌会で暮田さんと知り合って、川柳だけでなくて、彼女のファッションや趣味にも衝撃を受けました。私が大学に入って世界が広がったと思ったのは、そういう人との出会いです。
先生は、短歌を大学生の頃から始めたのですか? それとも、小さい頃から続けているのですか?
始めたのは高校1年生か2年生か、そのころですね。もともと小さい頃から本は好きで、最初は小説を書きたくて。小説をちゃんと書き上げたことがないのに、小説を書きたいという、実を伴わない希望だけ全文表示するがありました。でも書くことが好きだったので、ほぼ日記のような詩を、私なりの文学的な表現を使って書いていました。それが中学生のときです。そして、高校生になってから短歌に出会いました。枡野浩一さんの歌集を地元の図書館で見つけたことがきっかけです。それから、短歌を書きだしたら、とてもしっくりきました。それまでの日記や詩は、自分でもあまりいいとは思えなかったので。でも、短歌だったら、この長さがちょうどよくていいと思えました。短歌は私に向いている、文学にしていけるんじゃないかと思って雑誌などに投稿をするようになりました。
波長が合ったのでしょうか?
そうですね。私にとって、たぶん俳句は短すぎ、小説は長すぎるのでしょうか。単純ですが。私に短歌が合っていると思う要素はいろいろあるのですが、一つは長さです。
短歌は、最初に状況を詠んでいて、最後にページをさっとめくられるような、思いがけない展開がありますね。そこに、切り替えの早さを感じます。私小説を読んでいるような、他人の日記を読んでいるような感想をもちますね…。
短歌も色々ありますが、私の短歌は、そういう感じだと思います。近代以降の短歌は「私性」(作品の主人公が、多くは作者と捉えられる一人の人に紐づくこと)の文学である面が大きいのですが、おおむね全文表示するそれに乗っかっています。言葉派よりは人生派というか。また、どこまで書いてどこまで書かないか、ということが短歌のキモになるのだと思うのですが、私の場合その感覚も短歌の呼吸と合うのだと思います。
同人誌を作っているのですね?
大学短歌会時代に同じ歳の人たちと同人誌を作って、大学卒業後も活動しています。自分たちで原稿を作って本の形にしています。
先生は、どのような短歌を作るのですか?
私(の作風)に一番近いのは、俵万智だと思います。短歌を始めた頃に影響を受けたのは枡野浩一、憧れたのは穂村弘なのですが、結局は俵万智に近いと思います。
斬新で古典的なのでしょうか?
俵万智は人生でそのとき何をしていたか如実にあらわれる歌を作っていると思いますが、私もその傾向です。
俵さんの歌は、人生や生活が分かる歌ですね。
そうですね。それから文体の飾らなさも近しいと思います。俵万智の、一見平易だけど実は修辞にすぐれているというのは目指したいところです。 歌人ではありませんが、同じく一見平易だけど技術があ全文表示するる作品を書く作家として、俵万智と同時期にデビューした吉本ばなながいます。私は卒論も修論も吉本ばななについて書いていて、好きな作家です。研究のために『キッチン』が出た当時の書評を見ていたら、「吉本ばななを添削する!」というような勢いの書評家もいました。言葉づかいが間違っているとか、「私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う」という書き出しの一文は、自分のことを語っているのに他人のことのように「思う」と表現されていておかしいとか。同時代に俵さんは「短歌をキャッチコピーにした」と批判されがちでした。今『キッチン』や『サラダ記念日』を読むとそれが現在のスタンダードになっていると感じますが。私自身も自然に影響を受けました。
先生は日頃短歌を作っていらっしゃいますが、そのための「ことば」を増やすにはどうしたらいいでしょう。
ことばを増やすとしたら、やはり古典から現在のベストセラーまで、本を読むということでしょうか。
私自身は、短歌を作る上で語彙を増やすために意識して努力してきたのではなくて、全文表示するむしろ日常の言葉でどれだけ詠めるかを考えてきた気がします。自分たちが使っていることばで、つぶやきにならずに作品として成立できるかを考えます。
たとえば、先生の短歌を作る体験を生徒に伝えるにはどういったことを伝えたいですか?
まだ実践には至っていませんが、作る前にまず短歌を知ってもらいたいなと思っています。授業に組み込むとしたら、古典文法の解説をするときに私のおすすめの短歌を例文にするとか……? また、短歌を全文表示する詠む(作る)だけではなくて、読む(評する)ことで個性を発揮することもできるのは知ってほしいですね。
高校生のときの体験で、ふつうであれば言い過ぎだとか変だということでも、短歌にすると文学になるということに気づきました。友達に言って変な感じになったことをどうにか五七五にして投稿欄に送ったら歌人の方にコメントしてもらえたときは嬉しかった。そういうことも短歌にのめり込んだきっかけです。ふつうに言ったら恥ずかしいことも短歌にすれば文学になるということ。これも伝えたいですね。変なことを言ってもいい……。短歌を作ることについておすすめの本は、私が短歌を作りはじめた頃に読んだ、枡野浩一さんの『かんたん短歌の作り方』です。私はそれを読んで多くのヒントをもらいました。
最後に生徒に向けてメッセージをお願いします。
案外、日常生活で自分に見える世界は狭いものです。
世の中には、びっくりするような読みものが沢山あります。初めにお話しした川柳全文表示するそもうですが、私は大学の文学部の授業で高橋源一郎なんかを読んでびっくりしました。自分の手の届く範囲だけでなく広く読んでみることをおすすめしたいです。では、どうしたらいいかというと、先生のおすすめの本を読むとか、ブックガイドの類を参考にしてみるとか、本屋さんで普段は読まないような本を手に取るなどですかね。案外自分の知らない面白いものはたくさんあるよ、と伝えたいです。 あとは、名前だけ知っている古典を読んでみるといいと思います。古典の名作というのは、やはりすごいなと思うものが多いです。
おすすめの本をお願いします。
高校生のとき短歌とは別に、『枕草子』が好きでした。
授業で国語の先生が(清少納言の仕えた)定子さまのこと、清少納言と定子さまの全文表示する関係がいかに良いものだったかを熱く語ってくれて憧れました。その頃、枕草子を下敷きにした冲方丁『はなとゆめ』を読んで清少納言観に非常に影響を受けました。すてきな世界、すてきな関係が描かれていて。高校生のときは清少納言に感情移入して、清少納言になりたいと思っていました。私の定子さまがいたらなあ、と。
清少納言・枕草子の研究も進んで別の捉え方もありますが、私のお気に入りの読み方の線では『はなとゆめ』がおすすめです。古典の授業が楽しくなるのでは!
今日は、短歌と古典文学のお話しを、有り難うございました。
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インタビューの中に登場した先生オススメ本
  • 『ふりょの星』
    暮田 真名 著(左右社)
  • 『はなとゆめ』
    冲方 丁 著(角川文庫)